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ユーゴスラヴィア現代史 (岩波新書)


ユーゴスラヴィア現代史 (岩波新書)
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■レビュー - 平均評価(5段階) 4.5

4 連合か民族自決か 2010-03-21
セルビア公国誕生からボスニア紛争まで簡潔に纏まってい
る。地図や年表が充実しており、かなり理解しやすい作り
になっている。

論調は基本的に連合国家に好意的である。確かに連合にな
ったことでかえって民族差別が是正され、教育等の国家の
基幹が発展した点は評価できる。このような視点から著者
が連合崩壊の原因を国民の意思ではなく欧米の失策に求め
ている点も面白い。

ただ行間に著者の単純な社会主義、多民族国家の憧れが透
けて見える点は気になった。またチトーの記載が割とあっ
さりしていた点も不満だ。なんといっても彼が連合形成の
最大の功労者なのでもっと彼の思想について記載があって
良いと思う。

5 地域、民族の歴史を踏まえた労作 2008-07-26
「民族浄化」やNATO軍による空爆などの悲惨な状況が、なぜ現代のヨーロッパにおいて生まれたのか。ボスニア内戦の構図を理解するのに有益な書。

著者もあとがきで記しているように、「現代史」と銘打ちながら、中世のセルビア王国やクロアチア王国などから紹介しており、南スラブ地域の通史でもある。このため、読み始めた当初は、第一次世界大戦後に成立した「第1のユーゴ」より前の、こうした歴史的記述部分はなかなか頭に入りにくく、ある程度読み進んだところで再度冒頭に戻って読み返すほどだった。

しかし、その結果、ボスニアに混住していたそれぞれの民族の歴史的な経緯や意識が、そのルーツである中世の「王国」時代から理解でき、チトー率いる「第2のユーゴ」解体から内戦に至る流れはしっかりと追うことが出来た。

セルビア人、クロアチア人、ムスリム人それぞれの歴史を丹念に追っているからこそ、「セルビア人悪玉論」に偏る「西側」の見方を超えた客観的な記述が出来たのだろう。地域、民族の歴史を踏まえた労作といえる。

4 民族自決の限界(同日一部修正) 2008-05-29
 1946年生まれのバルカン近現代史研究者が、ボスニア和平直後の1996年に刊行した本。ユーゴスラヴィアは、オスマン帝国とハプスブルク帝国の支配下にあった南スラヴ系諸民族が、第一次世界大戦に伴う両帝国解体を契機に、イタリアとの対抗上、セルビアを中心に統一国家を形成したものである。しかし、ユーゴはその多民族性にもかかわらず、「単一民族」の民族自決に基づく「国民国家」とされたため、主にクロアチア人から批判を受け、国王は独裁により民族主義を抑えようとし挫折した。1941年枢軸国の侵攻によりユーゴは分割され、クロアチア独立国が建国されたが、共産党のチトーを中心にパルチザン闘争が組織され、社会変革を実施しつつ、独力で対独戦争と内戦を戦い抜く。この過程でチトーは民衆の圧倒的な支持を受け、戦後まもなく建国された連邦制国家の下で、急速な社会主義化を進めたが、まもなくソ連と対立し、コミンフォルムから追放された。この厳しい状況下で、ソ連との対抗上ユーゴが掲げた政策が、自主管理と非同盟政策であり、60年代には市場メカニズムも積極的に導入された。しかし、それは結果として経済的な格差の拡大と、民族主義の台頭をもたらす。チトーは、セルビアの主張の抑制と党の積極的役割の強調により、連邦を緩やかに統合しようとするが、彼の死後の経済危機と、東欧変革の中での複数政党制による自由選挙は、民族主義を助長し、1991年連邦は解体した。しかし各共和国で少数派に転落するセルビア人はこれに反発し、まずクロアチアで、次いでボスニア・ヘルツェゴヴィナで内戦が勃発し、最終的にNATOの軍事介入を受けることとなる。著者はこのユーゴの経験から、民族混住地域での民族自決の不可能性と、帰属意識の多重化による民族意識の相対化の必要性を強調する。コンパクトに基礎的な事実が分かる。

3 バルカン地域の歴史が分かりました 2006-11-19
ユーゴスラビアで戦争があったのは知っていましたが、何故おきたのかということに関しては知らないままでした。
サッカー日本代表オシム監督に関する本を読み、改めてこの地域で何が起きていたのか、というのを知りたくなり本書を購入しました。
世界史に疎い私にとっては最初の頃は難しかったですが、読んでいくうちにこの地域の特色や背景について理解できるようになりました。
ただ、本書が書かれたのが1996年という内戦が終了してから時が経っていない頃なので、内戦に関する詳しいところは記述されていないように感じました。
本書は、旧ユーゴスラビア地域の近代の変遷について知るにはいい本だと思います。

5 ユーゴスラビアは何故崩壊したのか。セルビアだけが何故悪者になったのか 2006-07-11
旧ユーゴが崩壊した理由を1800年代にまで遡って解説した本である。ページ数に制約がある新書の性格上、内容的には概略とどまっているのだが、初めて読む者にも理解しやすい内容となっている。

ユーゴ崩壊の過程において、セルビアは悪者のレッテルを貼られ、「民族の独立(自決)」を掲げる国々は正義とされていたが、著者は、各共和国の独立はそんな単純な理由で説明できるものではなく、誰もが被害者であり同時に加害者であるという趣旨でセルビアだけが悪者ではない(その為に時代を遡っている)と主張する。そして、おだやかな表現ではあるが、各政治勢力に追随しただけで一方的な報道を行ったマスメディアのプロパガンダを批判している。

「戦争広告代理店(高木徹著)」というノンフィクションがある。ボスニア内戦においてボスニア・ヘルツェゴビナの広報活動を請け負ったアメリカの広告会社を描いたこの作品は、広告会社が行った「宣伝」とそれを鵜呑みにした各国メディアの様子がよく理解できる。一般人である私には衝撃的な内容の力作であったが、同時に著者がNHKのディレクターであるにもかかわらずメディアの罪を反省しようともしない後味が悪い作品でもある。

ユーゴ内戦は、コソボ紛争時の99年にNATO(アメリカ)が人道介入の名の下に行った空爆によって終結されたとされているが、その後、この介入にある思惑があったことが文書(付属文書B 興味のある方は調べてみてください)で明らかになっている。

一応の内戦終結後、メディアは沈黙し、モンテネグロの独立も殆ど報道されなかった。彼らの行為が旧ユーゴ庶民レベルでどのような深刻な状況を引き起こしているかを知りたい方には「木村元彦」の一連のルポを読むことをお勧めしたい。

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